きじなごです。
作品のシナリオを作るにあたって何度も読み返している書籍があります。
それはズバリ『「感情」から書く脚本術』です。
この本はシナリオを作る人にとっては非常にためになる内容だと思います。
なのでこの本の概要と感想を、おすすめするつもりでざっくり書いていこうと思います。
「つまらない」脚本からの脱却

本書では初手から「ハリウッドに送られてくるほとんどの脚本はつまらない」とバッサリいってきます。つら。
でもまあそれが現実だと思いますし、現に賞を取ったり興行収入数十億といった作品ってそんなボコボコ生まれてきませんよね。
でも、著者はただ「つまらない」と嘆くのではなく、過去の優秀な作品の脚本を「感情」という観点から分析して、「どうやったら面白い脚本が作れるか?」という問題に真正面から向き合っています。
基本をなぞるだけでは面白い作品は作れない
昨今は、脚本やシナリオに関する技法書がたくさん出版されていますし、ネットにも大量の情報が漂っています。
なのになぜ、ほとんどの脚本はつまらないのか?
お約束通りで、機械的で、何の驚きもない。(って書いてありました)
それは、ただシナリオのレシピをなぞれば面白い作品が作れるわけではないからだ、と筆者は綴っています。
無論基本は大事ですが、それだけでは足りないと。
読者の「感情的体験」が全て
筆者は、脚本を執筆する上で最も大事なことは「脚本を読む人に感情的な体験を提供する」ということとしています。
読者の心を動かした作品こそが、面白い作品だということ。
感情的体験が全て。
感情的体験が全て。
大事なことなので何回でも書いときます。テストに出ますよ。
本書ではそんな「感情的体験」を、どうすれば人工的に作り出すことができるか、非常に子細に書かれています。
そう、感情は「作れる」のです。
感情を動かすためのテクニック
技巧に関しては本書にびっちり書かれているので多くは書きません。
過去の映画の名作を例に挙げて説明しているところも多いので、まずはその作品を見てみるのもいいと思います。私の大好きな『羊たちの沈黙』も載ってます。
脚本を作るのに必要な6つの要素
本書は大体以下の項目に分かれています。ほかにもいくつかありますが短いので省きました。
- コンセプト
- テーマ
- キャラクター
- 物語
- 構成
- 場面
特にページが割かれているのが「キャラクター」と「物語」の部分ですね。
キャラクターに共感できてこそ読者は感情が動きます。
キャラクターが活きる物語だからこそ人は感動します。
この二つの要素だけでなく、6つの要素は相互に関わりあっています。これらのバランスが取れている作品こそが「面白い作品」と言えるのではないでしょうか。
つまり全部大事ということです。余さず読みつぶしましょう。
重要なのは「読者がどう感じるか」
本書の中にすごくいいなと思った言葉が載っていました。
最初の一文で、絶対に読者の喉元を掴め。次の文で親指を気管に捻じ込め。
あとは壁に抑えつけて、最後まで離すな。
――ポール・オニール
「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方 心を奪って釘づけにする物語の書き方
もう読者殺す気ですよね。殺意がムンムンです。
かくいう私も、「作品で読者全員をぶん殴る(感情的な意味で)」つもりで作っているところがあるので、非常に共感できました。
それぐらい、脚本には読者を夢中にさせられるポテンシャルがあるってことですよね。
また、本書には「共感」「期待感」「好奇心」「興味」など、読者の気を引くための感情がはっきりと示されています。
これらの単語に注目して読んでいくと、いいヒントが得られるかもしれません。
この本を読んだ感想
きじなごがこの本に対して抱いている感情は「最高。100億点満点。我がバイブル」以外の何物でもないのですが、それだけだと何がいいのかわからないのでもうちょっと詳しく書いてみます。
数々の名作の種明かし
前述しましたが、この本は名作の脚本を元に「どうすれば読者の感情を動かせるか」について解説されています。
物語自体のネタバレもまああるにはありますがそこは昔の作品なので目をつぶるとして。
ポイントは名作がどうして名作たり得たのか、というテクニックが丸裸にされている、というところです。
名作が自然に生み出されたものではなくテクニックによるものだと知ってしまうと、がっかりしてしまう人もいるかもしれません。
ただ、私は逆に燃えましたね。「あ、これ人の手で作れるんだ!!」ってなりました。
制作者は神ではないということがわかると、なんだか自分も頑張ろうと思えてきちゃって。傲慢ですかね?
レシピ本ではない、本当のテクニック本
世の中には様々なノウハウ本が大量に積んでありますが、その中から自分が本当に求めているノウハウを見つけるのって大変ですよね。
何がわからんのかわからん、なんてこともしょっちゅうです。
タイトルを見て購入してみたけど前買った本と大体同じ内容だった……みたいな。
私がこの本を「ほかの脚本、シナリオ術と違うな」と感じたのは、まず基本的なことは書かれていないという点。そしてあくまでも「読者」目線である点。
シナリオのノウハウって、最初はまず起承転結とか三幕構成みたいなフレームの説明からされてるんですが、本書は全部ぶっ飛ばしてます。後半にちょろっと書いてある程度。
でも知りたいことは全部載ってるんですよ。なぜなら読者がどの展開でどのように感じるか、が書かれているから。
どのように書けば形になるか、ではなく、どうすれば読者が面白いと感じる形にできるか、という内容なんですね。主観ではなく客観。私が大事にしたい事柄の一つです。
だから私みたいなペーペーにも刺さったんだろうなと思います。
この本をおすすめしたい人
- 面白い物語を作りたい人
- ある程度物語を書いたことがあるけど行き詰まってる人
- 名作の客観的な分析が知りたい人
個人的にはこんな人たちにおすすめしたいですね。脚本術と書いてありますが小説、漫画などストーリー性がある分野全てに通じると思います。
どんな作品を作りたいかは三者三様です。なのでこの本に書いてあることを参考にしたら、それぞれの面白い作品ができるようになると思ってます。
みんな!面白い作品を作ってくれさい!そして私に見せて!
……あ、ちなみにこの本を1度読んだ後に書いたのが草稿すべこと三部作『河童』です。
良かったらどうぞ(宣伝)。
おわり
またしても長文になりましたが、お読みいただきありがとうございました。
皆さんの創作ライフがより楽しいものになるよう、きじなごは祈ってますよ。
では!